「電子ドラム」は、1970〜80 年代に初めて開発、発売されました。
当時はかなり高価だったこともあり、一般的に普及することはありませんでしたが、1996年にヤマハからDTXシリーズが、1997年にRolandからメッシュヘッドを採用したV-Drums TD-10が発売され、リアルな打感と消音性から爆発的なヒットとなり、一般家庭での練習用として広く普及することとなりました。
現在では当時よりも静音性や音のリアルさがさらに大きく進化したものの、それでも常に電子ドラムの演奏に付きまとうのが「騒音問題」です。
こちらのページでは「電子ドラムの騒音問題はなぜ起こるのか」「マンションでも安心して演奏できる具体的な対策方法」など、電子ドラムの騒音にまつわる内容をご紹介していきます。
「電子ドラム」は他の電子楽器と同様、ヘッドホンなどを用いて楽器の演奏音が外に出ない楽器です。
打音の静かなメッシュパッドなど、専用のパッドも改良が進み、スティックの打撃音も小さくなっています。
それなのに、電子ドラムによる騒音問題は絶えません。
この記事では「なぜ電子楽器なのに騒音問題が起きるのか」という電子ドラムという楽器の特異性と、どの程度まで対策をすればご近所トラブルが起きないか、そして対策のための防振アイテムの組み合わせを実例を交えてご紹介致します。
「電子ピアノ」と「電子ドラム」、どちらも同じくヘッドホンで練習が出来る家庭用電子楽器ですが、電子ピアノはマンションでも手軽に弾けるのに電子ドラムは対策をしなければ即騒音問題・ご近所トラブルに発展してしまいます。
ドラムはスティックで「叩く」のでそちらが問題かと思いきや、ヘッドホンを使用していれば実はスティックで叩いた音はほぼ部屋の中でしか響かず、足で踏むキックペダルやハイハットペダルの振動が原因の大半となっています。
通常の音は「空気音」、振動による音は「固定音」と呼ばれます。主にペダルを踏むことで発生する「固定音」は声や耳に聞こえる音と違い、建物に響きやすいのにも関わらず、出している当人が気付きにくく「大丈夫かも!」と思ってしまいがちなため、騒音問題が起こりやすくなっています。
ちなみに、住宅の騒音の基準は環境省によって定められており、昼間は55デシベル、夜間は45デシベルを超えると「騒音」とされています。
デジベルとは主に音の強さや音圧を表す単位で、10デシベル変わるごとに音量は3倍上がります。50デシベル→60デシベルでは3倍、50デシベル→70デシベルでは9倍、50デシベル→80デシベルでは27倍というような具合です。
例えばお子さんが走る音は一般的におよそ50~66デジベルとされており、夜間だと気になるけど昼間だったら気にならないかな?くらいの音になりますが、ドラムペダルの階下に伝わる振動音は60~80デシベルもの音量となります。
音の大きさを表す単位のことを、dB(デシベル)と表記します。数字が大きくなればなるほど音が大きくなります。
一般的に人は65dBを超えてくると「うるさい!」と感じます。ここがご近所との騒音トラブルになるひとつの基準になります。
電子楽器だから大丈夫じゃないの?と思ってしまいがちですが、「振動が発生する」というのが電子ドラムの特殊な部分で、他の電子楽器とは切り離して考えなければなりません。
もし上の階に住んでいる人の足音が聞こえたことがある、という方は、足音の何倍もの音量が一定のリズムで聞こえ続けるというのを想像してみてください。
マンションの管理会社へ確実に隣人からのクレームが入るのはもちろん、場合によっては110番通報で警察が家に訪ねてくるということも起こるレベルの騒音です。(実際に対策を怠りそのような事態に発展したドラマーの方もいます)
ちなみに、上記は鉄筋コンクリートのRC造マンションでのお話なので、木造や軽量鉄骨造の場合はさらに大きな振動音が響くことになります。
実際に110番通報まで発展した方は、RC造・角部屋2階・1階は駐車場という環境で、角部屋かつ下の階に人が住んでいないという好条件にも見える状況にも関わらず、隣の部屋の方からクレーム・通報があったそうです。
振動は下だけでなく横や上にも伝わっていきますので、角部屋だから、1階だから、という環境でも全く安心は出来ません。
また、一戸建てでも隣の家が近い場合は、対策無しでは振動が伝わりトラブルに発展するケースもあります。
電子ドラムをご家庭で演奏する場合、防振対策をしていない環境では絶対に叩いてはいけないと思っておきましょう。
以下の3つの方法を組み合わせることで、お子さんの足音と同等もしくはそれ以下まで電子ドラムの振動を下げる事が出来ます。
住宅環境にもよりますが、どれかひとつでも欠けると振動が響いてしまう場合がありますので、出来るだけ事前に準備をしておきましょう。
※演奏者のパワーや演奏スタイルによって振動の発生具合は変わりますので、あくまで目安としてお考え下さい。力強いパワータイプのドラマーの方や住宅環境によっては、それでも対策し切れない場合もございます。
Rolandから出ているTDM-10、TDM-20はほぼ唯一の電子ドラム向け防振マットになります。
底面に採用しているウレタン・ゴムは、床を傷つけることを防止するだけでなく、衝撃や振動を和らげる効果があります。
(ただし、衝撃の吸収度や吸音効果は、建築物の構造や床面の素材によって異なります。また、演奏時の振動を完全に除去するものではありません。)
[Roland HP]TDM-10 は、一般的な家庭用マットやカーペットとどう違うのですか?
他メーカーからも電子ドラム用マットは出ていますが、滑り止め用のセッティングマットが大半の為、防振効果はありません。
ヤマハやALESIS、ATVなど他社の電子ドラムをお持ちの場合も、Roland製の防振マットをご使用ください。
また、防振マットの下に、市販のジョイントマット(パズルマット)やお風呂マットなどの厚めのマットを設置することで、より振動を抑えることが出来ます。
Roland 防振マットは大きさごとに3種類のマットがあり、一般的なサイズの電子ドラムにはTDM-10、TD-27KV-Sなどの大型サイズの電子ドラムにはTDM-20をご使用ください。
ペダルの振動を防ぐために開発されたRoland NE-10は階下への振動を75%カット(※メーカー測定による)する効果があります。75%ということは、およそ目安として12デシベル減という形です。
独自形状の半球型防振ゴムが振動を吸収し、ここまでの効果を発揮します。
NE-10を2枚、キックペダルとハイハットペダルの下に設置します。
ハイハットスタンドが含まれる電子ドラムの場合は、ハイハットスタンドの3つの脚の下にNE-1をひとつずつ、計3点設置します。
他社では見られない製品となる為、ヤマハやALESIS、ATVなどRoland以外の電子ドラムの場合もこちらをご使用ください。
シングルペダル+ハイハットペダルが独立しているタイプの電子ドラム。
シングルペダル+ハイハットスタンドでハイハットを設置するタイプの電子ドラム。
ツインペダル+ハイハットペダルが独立しているタイプの電子ドラム。
キックペダルはペダルを踏むと”ビーター”というバチのような部分が前に倒れ、バスドラムを叩くことで音を鳴らします。
この「ビーターを動かす」「ビーターが打面を叩く」というのに大きく踏み込む力が必要になり、足音よりも大きな振動が生まれてしまいます。
各メーカーそれぞれに対応したビーターのないペダルに付け替えることで打撃の衝撃が無くなり、さらに自然と踏み込む力が抑えられる為、振動を大きく抑制することが出来ます。
通常のバスドラムパッド+キックペダルとは簡単に繋ぎ変えられますで、時間帯によって使い分けをすることも出来ます。
※ヤマハにはヤマハ、RolandにはRolandなど、同一のメーカーで揃えないと正しく動作しない場合がありますのでご注意ください。
(※1) KT-9、FD-9は静粛性向上のため開発されたRoland V-Drums専用ビーターレスペダルです。階下へ伝わる音をKT-9は63%(約9デシベル減)、FD-9は15%削減します。(※削減量はメーカー測定による公表値)
(※2) ATV aDrumsシリーズのaD5音源モジュールはRoland製品のペダルやパッドに正式に対応しています。aDrumsシリーズをお持ちの場合はRolandのKT-9やFD-9などが使用可能です。
ハイハットスタンドを使用する電子ドラムの場合は以下の2パターンがあります。
ただし、ハイハットスタンド使用の場合だと環境や演奏の強さによっては、ノイズイーターを使用した場合でも振動が多少伝わる可能性がありますので、万全を期すならビーターレスペダルをご検討ください。
踏む頻度としてはキックペダルの方が圧倒的に多いので、キックペダルよりかは優先度を下げて考えても大丈夫です。
[ドラム専門情報サイト MyDRUMS]Roland KT-9 検証記事
※上記MyDRUMS記事内の価格は発売当時のものです。現在の販売価格と異なりますので、予めご了承ください。
※上記検証記事や動画内に登場する電子ドラム「TD-11KQ-PS」は現在生産完了となっております。
電子ドラムの防振対策で、かなり効果が高いとされるもののひとつが「ディスクふにゃふにゃシステム」という一般の方が考案した対策方法になります。
ジョイントマットなどの上に「バランスディスク」というバランスボールを平べったくしたトレーニンググッズを四隅にひとつずつ乗せ、その上にベニヤ板のボードを設置し、さらにジョイントマットを被せたものに電子ドラムを設置するという、ホームセンターなどで各製品を揃えてDIYするものとなります。
空気の入ったバランスディスクが振動を吸収し大きな効果があるようですが、それ自体が製品化されているわけではなく、各自で自作する必要があります。
作成には以下のものが必要になります。
こちらを順番に重ね合わせることで作成することが出来ます。
詳しい作成方法については「ディスクふにゃふにゃシステム」でGoogleなどでご検索ください。
こちらの一番下にRoland TDM-10などの防振マット、一番上にNE-10などのノイズイーターを設置することでさらに効果は高まり、ビーターありのペダルでの演奏も問題なく可能になる場合があります。
ただし、こちらはメーカーが販売している防振グッズではございませんので、あくまで製作や使用は自己責任となっております。予めご了承ください。
マンションに住んでいてこれから電子ドラムを始めたい方へ、電子ドラム本体+防振対策グッズや電子ドラムの演奏に必要なものを集めたマンションでも安心セットをご用意しました!
わざわざご自身で防振グッズを組み合わせたり、必要なものを調べたりする必要がありませんので、マンションで練習できる電子ドラム一式を手軽に揃えることが出来ます。
※演奏者の力の強さや居住環境によっては、それでも夜間などの静かな環境では演奏が難しい場合もございますので、予めご了承ください。
オールメッシュパッド採用のAlesis電子ドラム エントリーモデル。
バスドラムはビーターレスキックトリガー仕様なので、ノイズイーターと防振マットを組み合わせることでマンションでも安心して演奏することが出来ます。
セット内容:本体/イス/スティック/TDM10(防振マット)/NE-10×2/ヘッドホン
Rolandの本格サウンドをリーズナブルに楽しめるエントリーモデル。
初めから静粛性の高いビーターレスキックトリガー仕様なので、ノイズイーターと防振マットを組み合わせることで安心して演奏することが出来ます。
高さ調節が容易で、小さなお子様から大人の方まで楽しめる電子ドラムです。最も人気の高いブランドRolandで手軽に電子ドラムを始めてみたいという方に最適です。
セット内容:本体/イス/スティック/TDM-10(防振マット)/NE-10×2/ヘッドホン
コストパフォーマンスに優れた人気のヤマハエントリーモデル!
シンバル数が他の同価格帯と比べ1枚増えています。これは一般的なスタジオやライブで使用するドラムと同じ数で、実際のドラムと同じセッティングで練習が出来ます。
ドラムを直接接続(※ケーブル別売)し専用アプリを使うことで簡単に高音質な演奏してみた動画撮影や、レッスンアプリでの練習を行うことが出来ます。
振動を抑えられるビーターレスキックトリガー「KU100」をセットに組み込んでいますので、通常のキックペダルと使い分けが出来ます。
セット内容:本体/イス/スティック/ペダル/ビーターレスキックトリガー/TDM10(防振マット)/NE-10×2/ヘッドホン
オールメッシュパッドにより物理的な打音も静かなTD-07DMK。
Bluetooth機能搭載で、スマホなどから好きな音楽を無線で流し、電子ドラムに繋いだヘッドホンやイヤホンで曲を聴きながらドラム演奏・練習が簡単に行えます。
振動を抑えられるビーターレスキックトリガー「KT9」をセットに組み込んでいますので、通常のキックペダルと使い分けが出来ます。エントリーモデルの中で最も静かに演奏できる機種です。
セット内容:本体/イス/スティック/ペダル/ビーターレスキックトリガー/TDM10(防振マット)/NE-10×2/ヘッドホン
このクラスではなかなか他にない12インチのスネアパッドを採用しています。細かな表現が求められるスネアのサイズが実物に近いので、非常に演奏感の良いモデルです。
また、従来よりも薄目な最新のシンバルパッドを採用し、シンバルも叩いた感触がリアルに近づいています。
「Prismatic Sound Modelingテクノロジー」という、サウンドや表現力が生ドラムさながらのリアルさになったドラム音源がTD-17~最上位モデルまで採用されており、この音源が搭載された機種ではTD-17が最もお求めやすくコストパフォーマンスに優れています。
「練習用」としては価格・サウンドを総合して最もオススメの機種です。
セット内容:本体/イス/スティック/ペダル/ビーターレスキックトリガー/TDM10(防振マット)/NE-10×2/ヘッドホン
叩いた音が静かで打感がリアルな発泡シリコンを採用したヤマハ独自の「DTX-PAD」をスネア・タムすべてに採用したモデル。
ヤマハの大きな利点としては、「Rec'n'Share」という専用アプリと連動して、好きな曲に自動でクリック(メトロノーム音)を追加して練習が出来たり、楽曲と合わせた演奏を録音/録画、録画データの編集、SNSへのシェアなどが簡単に出来るので、電子ドラムを利用して色々な楽しみ方が出来ます。
搭載されているDTX-PRO音源モジュールは、スタジオで録音された本物のサウンドを忠実に再現したリアルなサウンドで演奏することが出来ます。
また、Steinberg Cubase AIというDAWソフトが付属しており、USBケーブルでPCに接続することで本格的なレコーディングや編集を行うことが可能です。
まさに"電子"ドラムを最大限生かした楽しみの幅の広い機種です。
セット内容:本体/イス/スティック/ペダル/ハイハットスタンド/ビーターレスキックトリガー/TDM10(防振マット)/NE-10×2/NE-1×3/ヘッドホン
このクラス(TD-27音源)になると、叩く位置によって微妙に変わるサウンドのニュアンスまで表現してくれるので、普段から生ドラムを良く叩く方にとっては本物さながらの感覚で練習することが出来ます。
また、驚きのリアルさを誇る「デジタルパッド」に対応する最もお求めやすい機種であり、上達につれてパッドをグレードアップしていきたいという方にとって最上位クラスに劣らない、非常に拡張性に優れたモデルとなっています。
USBでPC/Macに接続することでパラデータでの本格レコーディング機能も搭載しており、「~~をしたいけど出来ない」ということが無いので買い替えの心配もなく、カスタマイズしながら末永く使っていける電子ドラムです。
初心者の方~上級者の方まで幅広くオススメ出来ます。
セット内容:本体/イス/スティック/ペダル/ハイハットスタンド(2脚タイプ)/ビーターレスキックトリガー/TDM10(防振マット)/NE-10×2/NE-1×2/ヘッドホン
実物とほぼ同様のサイズ感、また表現力が異次元の「デジタルパッド」により生ドラムから切り替えても演奏の違和感を感じないという方が多いでしょう。
出来ることなら生ドラムを置けるのが最高なんだけど、住んでいる環境的に置けない…という方は、こちらのモデルなら納得して演奏が出来ます。
練習からライブ・セッション・本格レコーディングまで可能な最上位クラスのモデルです。
セット内容:本体/イス/スティック/ペダル/スネアスタンド/ハイハットスタンド(2脚タイプ)/ビーターレスキックトリガー/TDM20(防振マット)/NE-10×2/NE-1×7(内訳:2個ハイハットスタンド、3個スネアスタンド、2個バスドラムパッド脚)/ヘッドホン
こちらは隣や階下の家への配慮というよりは、同じ家に住むご家族や同居している方への配慮になります。
パッドにスティックが当たる音は壁や床を通すほどではありませんが、家の中にはどうしても多少響いてしまうので、出来るだけ気にならないようにする方法を記載します!
また、バスドラムに関して最も打音が静かになる方法は、これまでにご紹介した「ビーターレスキックトリガーに変える」という方法ですが、こちらの項では通常のペダル+パッドで演奏する際の対策法になります。
打面に当たる部分が柔らかい素材になっているビーターです。
踏んだ際の感覚に少し違いがありますが、物理的な打撃音が大きく軽減されます。
通常のビーターよりも伝わる力は弱まりますので、電子ドラム側の感度設定を上げてサウンドを調整しましょう。
叩く部分が細い木材や竹、ナイロンの束になっている、ドラム用の「ロッド」というスティックがあります。
スティックほど音量が出ず、ブラシほどは叩き心地が変わらないロッドで演奏をすることで、物理的な打音を軽減できます。
スティックよりも伝わる力は弱まりますので、電子ドラム側の感度設定を上げてサウンドを調整しましょう。
演奏感をあまり変えたくないという方へ、特にキックパッドやシンバルパッドに効果が高い方法です。
キックパッドの打面にタオルを被せることで、ビーターが当たる物理的な打音が軽減します。
また、シンバルパッドは基本的にゴム製のパッドですので、スティックで叩いた際に多少の打音が出てしまいます。
こちらもタオルなどである程度軽減できますが設置が難しいので、意外なものでO型の便座カバーはぴったり簡単に取り付けられる場合が多く、シンバルのサイズにもよりますが縁から上面まで綺麗にカバーしてくれます。
スネア・タムのパッドも同様に少音化できますが、特にスネアは強弱表現に繊細さが求められる場所なので、最初からメッシュパッドやDTXパッドなどの静かなパッドが搭載された機種を選んでおくと安心です。
いかがでしたでしょうか?
電子ドラムの防振・防音に対して、数字を交えつつ具体的な対策方法のご説明と、簡単に揃えられるセットをご案内させていただきました。
これからドラム始めたい方やご家庭に電子ドラムを置きたい方のお悩みやご不安を少しでも解消出来たら幸いです。
ぜひ安心して演奏できる環境で電子ドラムを楽しみましょう!